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町村議会トピックス





平成30年3月 全国町村議会議長会「町村議会の議員報酬等のあり方 中間報告」

 

議員報酬の算定手順示す 住民への説明責任を果たす素材として利用を

   

全国町村議会議長会に設置されている「町村議会議員の議員報酬等のあり方検討委員会」(委員長・江藤俊昭山梨学院大学教授)は、平成30年3月、中間報告を取りまとめた。報告では、議員報酬の低さと議員のなり手不足は連動しているとした上で、議会活動に適する報酬額を確保する必要があることから、議員活動日数と首長活動日数との比較から議員報酬を算定する手順を示し、住民に対する説明責任を果たすべきとした。

検討委は平成29年4月、最近の議員報酬や定数の動向を確認し、今後の議論の考え方を提示することを目的に設置された。

全国議長会は昭和53年に議員報酬の算定に関して独自のモデルを公表しており、議員活動日数の平均と首長給与との関係で、議員は首長の給料月額の30%相当額などと示していた。現在ではこのモデルが現実に適合しない、逆に報酬増額の足かせにもなっているとし、検討委ではその新たなバージョンを示すことを目的とする。ただし今回は、全国共通のモデルは示さず、それぞれの議会で報酬額を考える視点を明確にするものと位置付けている。

 

【全国町村議会議長会「町村議会の議員報酬等のあり方 中間報告」

 

報告書全文(PDF)

 

定数・報酬は住民自治充実の条件 住民とともに考えよ

第1章は「最近の町村議会の動向と本研究会の基本的な考え方」と題し、委員長の江藤教授が担当した。

全国の町村議会議員の議員報酬の平均額は月額約21万円。市議会議員が約42万円、都道府県議会議員は約81万円と比較するとかなり低く、なぜこのような相違となるかの理由は明確でないとする。

平成23年に全国議長会が行った全議員を対象に行った意識調査によると、現在の議員報酬について、町村議員は圧倒的に低いと感じており、またボランティアでは成り立たないと感じているという調査結果を指摘した。

その上で、報酬と定数を考える原則を提示し、定数を半分にして報酬を2倍にするといった発想について、議員報酬と定数は別の論理であること。また削減を優先し効率性を重視する行政改革の論理と異なり、議会改革は地域民主主義の実現であり、定数・報酬を住民自治を充実させる条件として議論すべきとした。

また、現在の議員のためだけでなく、多くの人が将来立候補し議員活動をしやすい条件として考えるべきとし、「住民の声の実現」として削減に邁進する議会・議員は、将来を見据えれば住民に対する背信行為となる場合があることを自覚すべきと指摘した。

一方で財政的問題からどうしても削減せざるを得ない場合にも、議会力をダウンさせないため、議会事務局の充実や住民による政策提言・監視の支援を制度化すべきであるとした上で、議会運営は住民自治に不可欠であればこそ、その条件である定数・報酬は住民とともに考えるべきとした。

 

低い報酬と少ない定数は無投票当選につながる

第2章では「議員報酬・定数等に関する調査結果の概要と分析」と題し、長野基首都大学東京准教授が担当した。

研究会が平成29年7月に行った全国の町村議会を対象とした議員報酬・定数等に関するアンケート調査の分析を行った。

分析結果によると、平成23年4月から29年7月の間で議員報酬見直しを検討を実施済みあるいは実施中の議会は、全国の約4割。条例で定める報酬額を増額、あるいは減額条例が期限を迎えたため報酬額を元に戻した議会を合算した「増額議会」は29.0%で、「減額議会」の約4倍であった。一方、定数は31.0%の287町村で条例改正されたが、増員は1町のみであった

直近の一般選挙では20.6%が無投票当選、その5.2%の10町村が定数割れの状況。現職議長の3分の2以上が、議員報酬が「なり手不足に影響している」とし、約半数の議長が若者手当など各種手当制度、学校教育での地方議会の啓発の実施に問題解決への効果を期待していた。対して、休日・夜間の議会の開催には7割を超える議長がその効果へ懐疑的な見方を示した。

また、直近の一般選挙が無投票当選であった議会と報酬・定数との関係を分析。報酬が下がると無投票当選の発生率が上がっており、月額17.6万円以下では全体平均の約2倍の確率で無投票当選が発生していた。定数は財政力が影響し、定数が少なくなれば当選ラインが上昇することで無投票当選となることに結びつくとした。

報酬の低さと定数の少なさは無投票当選につながり、無投票当選の発生を避けるのであれば定数と報酬は一定の水準に保たなければならないとまとめた。

 

議会・議員活動増で専業議員の報酬確保を

第3章は「議員報酬をめぐる現状と町村議会の取り組み」と題し、牛山久仁彦明治大学教授が担当した。

町村議員の置かれている状況として、現状の報酬では専業で議員活動に専念するには不十分である町村が多く、不十分な活動では住民からの支持を得られず、負のスパイラルが生まれる可能性を指摘。「なり手不足」解消には、議員が専業で活動に取り組み、生活していけるための一定の報酬を確保することが求められるとした。

その上で、議員の活動内容と町長給与との比較によって報酬額に根拠を与え、それを報告書にまとめた北海道福島町など5町の取り組みを例に取り、「なり手不足」解消のために報酬増を見据えた場合議会活動を活性化し、議員の活動量を増やすことが必要であり、議会報告会や討論の場の設定などより住民の意見を自治体行政に反映させるための活動が求められるとした。

熟議を通じて自治体住民の意見を集約し合意形成を図り、政策立案に役立て、行政が立案・執行することに対する行政統制を機能させる。そうしたことを実現させてこそ、町村議会に対する住民の支持が得られ、魅力ある議会にすることで立候補者が増加し、「なり手不足」解消への展望が開けるとした。

 

「原価方式」の紹介―議員活動を明らかにし住民を巻き込んだ議論を

最後の第4章では「先駆議会(5町)の報酬額の算定方式」と題し、再び江藤教授が担当した。

報酬を考える基準として、議員の活動内容や日数を元に算定する原価方式が広がっており、会津若松市議会や神奈川県葉山町議会の試みを紹介。このうち会津若松市議会モデルでは、本会議・委員会の議会活動(A領域)、協議調整の場や議会報告会などの議員活動(B領域)、質問や議案に関する調査などの付随した活動(C領域)、議員として関わる住民活動など(X領域)を中心にそれぞれ時間数を選定し、首長の活動日数と比較。その割合で首長の給与から議員の報酬を割り出す。しかし、それによって導き出された数値は、住民と議論する際の素材であって、科学的な基準ではないと強調する。

また、原価方式の採用には特性があるとし、議員の活動とされる領域、現行の活動か今後の期待値なのか、また全数調査なのかサンプル調査なのかでも分かれるとしている。

報酬の基準に関する留意点として、夜間議会の導入を取り上げ、拙速な導入は議会力・自治力をダウンさせると指摘する。子育て世代を議論するため、役務の対価として報酬の議論ではなく、手当の議論を進めるべきとも指摘している。

報酬を考える場合に注意しなければならない点として、専門性を有した人材と市民性を有した多様な人材を対立して捉えるべきではないこと、議員の身分は法律上「非常勤」と規定されていないこと、議員の支援策として手当、政務活動費、議会事務局・議会図書室の充実強化など総合的に考えるべきこと、これらに留意して議論してほしいとした。

江藤教授はむすびで、従来よりも多様化し活動量も増えた議会活動に適する報酬額の必要性、住民への説明責任、報酬額と議員のなり手不足は連動しているといった議員報酬をめぐる考え方を再確認した上で、議員活動日数を確定し首長活動日数・給与との比較から議員報酬を算定する手順を、暫定的としながらも示した。

あわせて報酬額は科学的に算定できるものではなく、あくまでも説明責任を果たす素材を提供するものであり、それに基づき住民に説明し議会・議員活動の理解を広げることも重要な目的の一つであると強調した。





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