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町村監査トピックス

 

平成29年6月9日 地方自治法等の一部改正法が公布

「監査基準」全団体で策定義務・議選監査委員「選択制」に

 地方公共団体の適正な事務処理の確保などを目的として、監査制度の充実強化などを盛り込んだ「地方自治法等の一部を改正する法律」が6月9日に公布された。

主な内容は▽監査委員が監査を行うに当たり監査基準に従うこと▽議選監査委員の選任を選択制とすること▽議会が決算を不認定とし長が措置を講じた場合に議会へ報告すること▽長は内部統制に関する方針を定め必要な体制を整備することなどとなっている。

今回の法改正は、第31次地方制度調査会(地制調)が昨年3月に取りまとめた「人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申」を受けたもの。

改正法の施行期日は、監査基準の策定や長の内部統制などは平成32年4月1日、議選監査委員の選択制、決算不認定に関する規定などは来年4月1日としている。

【地方自治法等の一部を改正する法律】

概要

要綱

法律・理由

新旧対照表

読替表(地方自治法関係)


監査基準策定が義務化・議選監査委員が選択制に

地制調の答申では、監査の実効性を確保するため「地方公共団体に共通する規範として、統一的な基準を策定する必要がある」としていた。

それを受け、今回の法改正では、監査制度の充実強化策の一つとして「監査委員は、監査基準に従い、監査等をしなければならない」とされた。

現在、全国町村監査委員協議会(全国監査協)など監査関係団体が都道府県、都市、町村ごとに存在し、それぞれ監査の標準となる基準を策定しているが、その基準を適用するかどうかは各団体の判断となっている。

法改正後は、全団体で監査基準を定め、それに従い監査や、例月出納検査、決算審査等を行うこととなる。

監査基準の策定については、地制調の答申では、監査の実効性を確保するため「その内容は国が定めるのではなく、地方公共団体が共同して定める必要がある。」としていた。

改正法では、最終的に「監査基準は監査委員が定めるもの」とされ、「国(総務大臣)は、地方公共団体に対し、監査基準の策定について、指針を示すとともに、必要な助言を行う」とした。

これに対し、全国監査協は1月26日に開催した第26回定期総会で採択した要望の中で「国が定める参酌基準は、町村の実情を踏まえた基本的事項にとどめるべき」とし「その際、全国監査協が国の参酌基準を基に監査基準を策定し、それを基本として各町村が策定する仕組みとするべき」としている。

その他、地制調答申に基づき、監査委員の権限強化策として「監査委員は、監査結果報告のうち、必要な措置を勧告することができるとし、勧告を受けた長等は、必要な措置を講じ、その内容を監査委員に通知しなければならないもの」とした。

監査体制の見直しとして「条例で議選監査委員を選任しないことができるものとする」とした。地制調答申では「実効性ある監査を行うため議選監査委員の役割を評価する考え方がある」一方で「監査委員はより独立性や専門性を発揮した監査を実施し、議会は議会としての監視機能に特化していくという考え方もある」とし、各団体の判断で議選監査委員を置かないことができるものとした。

監査基準の策定や研修の実施、人材のあっせん、監査実務の情報の蓄積や助言等を行う「監査を支援する全国的な共同組織の構築」については、今回の法改正案では見送られた。

また、全国監査協が例年要望している「監査事務局を必置制とする」ことや「監査委員は議会において選任できるようにする」ことも、改正案には盛り込まれなかった。


決算不認定に「長の説明責任」入るも「長が措置を講じたとき」に限定

平成26年6月、都道府県、市議会、町村議会の全国三議長会は合同で地制調の専門小委員会に対し「重点検討項目」の一つとして「決算不認定の場合の首長の対応措置」の検討を申し入れていた。

それを受け、地制調答申にある「決算審議のあり方」では「議会が決算認定をせず、その理由を示した場合は、長が説明責任を果たす仕組みを設けるべき」とされた。

今回の改正法では「長は、決算が不認定となった場合、当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは、議会へ報告し公表しなければならない」(法233F)とされている。

地制調答申では「議会が不認定の理由を示した場合」に長が説明責任を果たすとされていたのに対し、改正法では「不認定の議決を踏まえて長が必要な措置を講じたとき」となった。

全国三議長会は、決算不認定の場合以外にも▽議員の責務を地方自治法上に規定すること▽議長に議会招集権を付与すること▽契約の締結、財産の取得処分に係る面積や金額要件を各自治体で独自に条例で定めること▽予算修正権の制約を見直すことについて「重点検討項目」として検討を申し入れていたが、いずれも法改正には至らなかった。


「内部統制体制」創設・損害賠償請求権「放棄禁止」見送りに

このほか改正法では「地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等」として「都道府県知事と指定都市の市長は、内部統制に関する方針を定め、これに基づき必要な体制を整備しなければならない」(法150条@)としたが、その他の市町村長は努力義務とされた。

方針を策定した長は、毎会計年度、内部統制評価報告書を作成し、監査委員の審査に付し、その意見を付けて議会に提出し、公表しなければならない。

また「地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し」として「条例で、その職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、賠償責任額を限定してそれ以上の額を免責する旨を定める」(法243の2@)ことを可能とした。

地制調答申では「住民訴訟制度の見直し」の中で「長や職員への委縮効果を低減させるため、軽過失の場合における損害賠償責任の長や職員個人への追及のあり方を見直すことが必要」としていた。

一方「議会は、住民監査請求があった後に、当該請求に係る損害賠償請求権等の放棄に関する議決をしようとするときは、あらかじめ監査委員から意見を聴取する」とし、地制調答申で指摘されていた「4号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄禁止」は、法改正案には盛り込まれず見送りとなった。

 なお「住民監査請求があったときは、監査委員は、直ちに当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならない。」という規定(法242B)も新たに盛り込まれたが、6月9日の公布日以降に住民監査請求があったときは、施行日(平成32年4月1日)前においても、当該請求の要旨を議会及び長に通知しなければならないとされている(改正法附則2条3項)ので、ご注意いただきたい。

 


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